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東京高等裁判所 昭和59年(行ケ)91号 判決

一 特許庁における手続の経緯、本件考案の要旨及び本件審決の理由の要点が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。

二 前示本件考案の要旨に、成立に争いのない甲第二号証(昭和五二―二五三一号実用新案公報、以下「本件公報」という。)及び第三号証(昭和五六年一一月二日付補正公報、以下「本件補正公報」という。)を総合すれば、本件考案は、ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置に関する考案であつて、ゴルフのプレーにおいては、クラブを入れたゴルフバツグをキヤデイが運ぶかプレーヤー自身が運ばなければならないが、従来の牽引又は自走によるゴルフバツグ運搬車、すなわちカートを使用すると、その車輌によつて大切なコース内の芝生を損傷することから、本件考案はそうした欠点を除去することを解決すべき基本的な技術的課題とし、従来、果樹園等において収穫した果実の運搬手段として用いられていた軌道運搬装置をゴルフコースに適用することを想起し、右課題解決の手段として本件考案の要旨のとおりの構成からなる支柱付軌道装置を採用したものであること(本件考案の要旨中の「軌条」は単軌条、双軌条のいずれをも含むものと解され、また、自走車輌とはプレーヤーやキヤデイが搭乗しないものを指す。)、本件考案は、ゴルフ場において、従来のカートに代えてゴルフコースに沿つた支柱付軌条によるゴルフバツグの搬送装置を採用したことにより(その敷設位置は別紙図面第1図参照)、<1>自走車輌が人力によることなく、かつ軌条に案内されて常に正しい姿勢で走行するので、逸走、転倒などの恐れはなく、したがつて、人身事故につながる危険は全くない、<2>軌条が支柱によつて架設されているから、地上障害物に阻害されることなく円滑に自走運搬車を走行させることができる、という支柱付軌条による貨物搬送装置本来の効果に加え、<3>カート道等の専用道路を造成する必要がないから、芝生の植生されたプレーグランドの面積が広くなり、プレー可能なゴルフコース芝生面を充分に確保することができる、<4>ゴルフコースにおいて最も重要な芝生を全く損傷せず、ゴルフコースを最良の状態に保全してプレーヤーのプレーを快適にし、更にコースの芝の育成、保全管理に要する労力、費用等を著しく軽減することができる、<5>プレーヤーは、キヤデイなしに自らゴルフバツグを円滑に搬送しながらコースを巡回することができる等のゴルフ場に生ずる特有の効果を奏するものと認められる。

三 原告は、まず、本件審判手続において、審判官が「朝倉パブリツク」に関する鈴木良治の証人調書(甲第八号証及び第二五号証)について釈明しなかつたことをもつて、本件審決は釈明義務に違反してなされたものである旨主張するが、後記認定のとおり、鈴木良治の証人調書(甲第八号証及び第二五号証)中には、本件考案におけるようなゴルフコースにおけるゴルフバツグの従来の運搬手段(カート)に代わるものとして支柱付軌条による貨物搬送装置を利用するという構成やこれを示唆する記載はないのであるから、本件審決の審判手続において原告が主張するような釈明義務が存したものとは認められない。したがつて、甲第八号証及び第二五号証に本件考案の構成を示唆する記載が存することを前提として、釈明義務違反を主張する原告の右主張はその前提において誤つており、採用することができない。

四 次に、原告は、本件審決は公知技術の評価を誤つて、本件考案は各引用例の記載に基づいて極めて容易に考案をすることができたものとも認められないとの誤つた判断をした旨主張するので、以下、この点について検討する(なお、各引用例が本件実用新案登録出願前に頒布されたものであることについては当事者間において明らかに争いがない)。

1(一) 成立に争いのない甲第四号証の一によれば、第一引用例には、「理事長登壇」と題する頁に、「無人機械化時代がくるのじやないかな。ハウスかどこかにコントロールセンターがあつて、完全に無人カートがコースを走るというものはどうなんだろう。………そんな時代がすぐ近くに来ているような気がする。」との筑波カントリークラブの理事長の発言が記載されていることが認められ、また、成立に争いのない甲第四号証の二によれば、第二引用例には、ラジコン等によつて制御される無人カートの構造に関する発明が記載されていることが認められるだけであつて、本件考案と関連性のある技術思想が開示されているものとは認められない。

(二) 成立に争いのない甲第四号証の三によれば、第三引用例の第一三一頁(写しでは左上)には、浜口鉄工株式会社が「小田原湯本カントリークラブ」に納入した軌条装置(ゴルフリフト)の写真が掲載されていることが認められる。

しかしながら、右写真によると、右ゴルフリフトはゴルフバツグを積載したカートとキヤデイ及びプレーヤーをグリーンから次のコースのテイグランドに運ぶ軌条装置であつて、急傾斜地を登る労力の軽減等を目的としたものと推認し得るにすぎず(右ゴルフリフトがプレーヤーをも運搬する双軌条ゴルフリフトであることは当事者間に争いがない。)、コースに沿つて巡回するものではなく、そこにはコースの芝生を損傷せしめないようにしようとする技術思想も、従来のゴルフバツグ搬送手段の欠点を除去すべく、これに代わるゴルフバツグ搬送手段を採用しようとする技術思想も全く認められない。

(三)(1) 成立に争いのない甲第四号証の四によれば、第四引用例には「カーパス、管理路のネツトワークプラン ゴルフカー導入コースのために」と題し、ゴルフカーを使用するゴルフアーがスムーズに流れるようにするとともに、管理機械とオペレーターが適切な場所からコース内に進入できるようにするためのカーパス(カートパス)、管理路等のネツトワークをどのように整備するかということについての具体的記載があり、その中に、「それは単に芝面の損傷を減少させるだけでなく、車輌進行に適した路面整備によつて移動のスピードアツプを図ることになるのである。」、「シヨートホールでは、フエアウエイを横切らせるか、フエアウエイ横に並行に布設するかしてテイからグリーンまで、カーパスを全通させてもよいであろう。」、「とくに使用頻度が激しくなつているコースでは、すべてのホールに、テイからグリーンまで全通するカーパスが必要となるかもしれない。」との記述があることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の五によれば、第五引用例には、「オートカートの実態を探る」との特集記事中にオートカートを使用した場合に芝を痛めるのではないかという点について、「池田ではコース内のワン・サイド・ラフ地帯に専用舗装路をつくつて、オートカートは一切芝地に入れさせないので、全く影響はない」との記述があることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の六によれば、第六引用例には、「わたしはこうして機械化を図つている キヤデイ対策のためのオートカート制」と題する「池田カンツリー倶楽部」の常務理事による紹介記事が掲載されており、その中に「当クラブでは全27ホールに簡易舗装道路を完備してある」との記述の存することが認められ、成立に争いのない甲第四号証の一八の一ないし四によれば、第一八引用例には、大阪府池田市所在の「池田カンツリー倶楽部」の各コースには、それぞれクラブハウスを出発点として各ホールの横に沿つて全コースを循環し、再びクラブハウスに戻つてくるようにしたカート道が敷設されていることが記載されること(カート道がコース内を通過して循環状に敷設されていることについては当事者間に争いがない。)、右カート道は昭和四〇年一月頃には設置されたことが認められ、更に、第一九引用例には、カート道がコース内を通過して敷設されているゴルフコースが記載されていることは当事者間に争いがない。

(2) 右事実によれば、本件実用新案登録出願前において、カートの使用に伴う芝生の損傷を防止する手段の一つとして、ゴルフコースに沿つてカート道を設けることが知られていたことが認められ、右カート道はカート使用に伴うコース内の芝生の損傷を防止することを解決すべき課題とし、その解決手段として設けられたものと推認することができる。しかしながら、カートのためのカート道とゴルフバツグ運搬用自走車輌を支柱付軌条により走行させる本件考案の軌道装置とは、前記課題の解決手段としては相違するものであり、右カート道に代えて支柱付軌条を採用することを示唆するものがあると解することもできない。

(3) 原告は、「池田カンツリー倶楽部」のカート道は、芝生上を自走車輌が直接走行移動することによつて生じる芝生の損傷を防止しようとする技術思想を有しているのみならず、本件考案の技術的課題、構成を十分に示唆しているものである旨主張するが、前認定のとおり、本件考案の課題を示唆するところがあることは認められるものの、本件考案の構成を示唆するところはないから、原告の右主張を採用することはできない。

(四)(1) 成立に争いのない甲第四号証の七によれば、第七引用例には、「多様化と経済性が認められた簡易モノレール運搬車」という大見出しを付した、モノレール等の製造業者六社の広告が掲載され、その広告文中において、モノレールが開発されたきつかけは、急傾斜地にあるみかん園におけるみかんの収穫、肥料の運搬が過酷な労働を強いられるということや、農業労働力の減少ということにあつたこと、モノレールは果樹運搬用だけでなく、農業用(ハウス園芸、しいたけ栽培)、土木建築用、林業用その他、商店(石屋)、鉱山などでも広く使用されはじめ、その性能の多様性と経済性が認識されてきた、との記述があることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の九ないし一一によれば、第九引用例ないし第一一引用例には、ゴルフバツグも運ぶ軌条運搬車の構造に関する発明が記載されていることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の一二によれば、第一二引用例には「オートコースター」と称するモノレールのカタログの一隅(写しでは三枚目右下隅)にその用途について、項目的に特に説明事項を加えることなく、「傾斜地、果樹園、桑園などの生産資材、収穫物の運搬」、「薬剤散布装置をつけての薬剤散布」、「しいたけ原木、植林苗木、肥料等の運搬」、「温室、ハウス等の収穫物の運搬、床土の入れ替えや薬剤散布」、「牧場、ゴルフ場、土木工事現場などの諸運搬」、「火薬及機械危険物の運搬」が列挙されて記載されていることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の一三及び一四によれば、第一三引用例には、果樹園内において用いられる「運搬機の種類」として、索道(ケーブル)、軌道式運搬施設、動力運搬車と並んで単軌式運搬機(モノレール)及びその構造が紹介されていることが、また、第一四引用例には、勾配、運転距離等から検討したモノレールの架設条件のほか、モノレールの架設の形態に関して、「レールは直線路に作つてもよいし、あるいは園内に環状に設置してもよい」との記述のほか、モノレール架設の形態として、直行状、蛇行状、環状に敷設した模式図が記載されていることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の一五によれば、第一五引用例には、「傾斜地ミカン園の合理化対策の一つとして特筆に値すると思われる事項は、運搬用具としてのセミコースターやモノレールなどの出現である。これらは極く最近、一般の交通運搬施設からヒントをえて傾斜地ミカン園用に改善され、販売されるようになつたものであるが、いずれも急傾斜地の立地条件を克服することのできる有力な施設として、爆発的な人気を呼び、当地付近では、現在、盛んに架設が行われている。」、「モノレールは、………樹間のレール上を自走式搬器を運行させて、農道や索道の基点から生産資材を運び上げたり、園内から収穫物を農道や索道の基点、または貯蔵庫までおろすのに使用する。」と記載されているほか、モノレールの利点ないし特徴について、<1>一本レールであるから、樹間のつぶれ地が非常に少なく、また、施工上、上下左右の曲がりが容易であるのでミカン園の地形に応じて敷設することができる、<2>スロツトルレバーのみで発進・停止・速度調節が可能であり、また、逆転装置の切替えによつて前進後進も簡単に操作できる、<3>レールの高さは自由に調節できるので、ほぼひざの高さにしておけば、園内のいずれの場所でも自由に、楽に荷の積み降ろしができる、<4>操作が容易で労働も軽いので、婦人や子供も作業に従事することができる等が記載されているほか、運搬能率に関する調査、考察の結果が数値に基づき詳細に記述されていることが認められ(第一三引用例ないし第一五引用例に果樹園等で用いるモノレール装置に関する記載があることは当事者間に争いがない。)、成立に争いのない甲第四号証の一六によれば、第一六引用例には、主題を「急坂・傾斜地における重量物運搬の合理化実験」とし、副題を「モノレール運搬車「ワイルド・ポーター」の性能と応用範囲」とする論文が掲載され、そこには右モノレールの変わつた用途として、鉱山での鉱石搬出、工場内運搬と並んでゴルフ練習場のボール運搬が挙げられていることが認められ、成立に争いのない甲第四号証の一七によれば、第一七引用例には、空港での軌条運搬車が示され、この運搬車はゴルフバツグを含む個々の乗客用手荷物の搬送用に設計されている旨記載されていることが認められる。

(2) 右各引用例の記載からは、本件実用新案登録出願前において小型貨物搬送装置としてのモノレール装置自体はよく知られており、その構造についても目的に応じて種々の工夫がなされるとともに、その省力性、搬送の容易性、安全性等モノレール装置の有する運搬手段としての利点が着目され、その用途を拡大しつつあつたことは認められるが、そこには、本件考案におけるようなゴルフコースにおけるゴルフバツグの従来の運搬手段(カート)に代わるものとして支柱付軌条を利用するという構成やこれを示唆する記載はなく、また、各引用例の用途からみて、カートの使用に伴うゴルフコース内の芝生の損傷を防止するという本件考案の基本的な技術的課題を示唆するものは何も認めることはできない。なお、前認定のとおり、第一二引用例には、モノレール装置の用途に関して、「牧場、ゴルフ場、土木工事現場などの諸運搬」との記載があるが、右記載は各分野における活用の可能性を一般的に示唆しているにすぎないものであつて具体性がなく、その前後の項目的記載や第七引用例及び第一六引用例の記載から、右に「ゴルフ場………などの諸運搬」とは、たかだかゴルフコースにおける補修資材等の運搬用としても用いることができることを示唆するにとどまり、それ以上に、ゴルフコースにおけるカートに代わるものとして支条付軌条を用いることを示唆しているものと解することはできない。

(五)(1) 成立に争いのない甲第四号証の八によれば、第八引用例には、本件実用新案登録出願前に「成田ゴルフセンター」において、練習場フイールドから管理室に至る区間にモノレール形式の運搬装置が設置されていたことが認められる。

(2) しかしながら、前掲甲第四号証の八によれば、右モノレール装置は、何らかの方法で集められた練習場フイールドに打ち出されたゴルフボールを管理室まで運搬することを主たる目的としたものであることが認められるから、芝生を運搬手段による損傷から守ることを意図して設けられたものと解することはできないし、本件考案のように、ゴルフコースに沿つて軌条が循環する構成を採るものでもない。したがつて、「成田ゴルフセンター」のモノレールが前記のような本件考案の技術的課題や構成を示唆するものと認めることはできない。

(3) 原告は、ゴルフ練習場とゴルフコースとでは芝生の重要性及び芝生の利用法が相違するとしても、ゴルフコースの芝生の重要性は従来周知のことであるから、「成田ゴルフセンター」のモノレールが「ゴルフコース内の芝生のカートからの保護など本件考案の技術的思想」を十分示唆している旨主張するが、右主張に理由がないことは既に述べたところから明らかであり、たまたまゴルフ練習場の芝生保護に役立つことがあつても、それは同モノレールにおいて課題とされていた事項ではないのであるから、そのことの故に同モノレールが前記のような本件考案の技術的課題や構成を示唆するものと認めることはできない。

(六)(1) 成立に争いのない甲第八号証(神戸地方裁判所姫路支部昭和五六年(ワ)第四九四号事件における鈴木良治の証人調書)及び第二五号証(大阪地方裁判所昭和五二年(ワ)第五六八六号及び昭和五六年(ワ)第六四五七号事件における同人の証人調書)によれば(なお、甲第八号証及び第二五号証は、本件審決の審判手続において提出された引用例ではなく、本訴において初めて提出された文献であるが、右文献を証拠として用いて本件審決の取消事由の存否を判断することができるか、という点に問題がないわけではないが、この点は措くこととする。)、本件実用新案登録出願前である昭和四六年一〇月に、高知市の「朝倉パブリツク」にモノレール装置が設置されたこと、右モノレール装置の構成は支柱の側方で軌条を支持する方式のもので、自走車輌は動力車と台車からなつており、右モノレール装置の軌条は、一番ホールのテイーグランドの後方にあるクラブハウス上の道路を始点として、九番ホールのグリーン後方を、一番ホールのコースに沿つて二番ホールのフエアウエイをとおり、同ホールのグリーン右側方を通過し、三番ホールのテイーグランドの後方に至り、この地点で軌条は二方向に分かれ、その一方は三番ホール、四番ホール、五番ホールのフエアウエイ及びグリーンに至つて終点となり、他方は六番ホール、七番ホール、八番ホールに沿い、八番ホールのグリーン側方に至つて終点となつていること、右モノレール装置は「朝倉パブリツク」のコースがいわゆる山岳コースで、自動車の通行路がないためコースの維持管理、補修に相当な経費と労力を要したことから、こうした点を解決するために敷設されたものであること、プレイヤーは、同ゴルフ場が九ホールのシヨートコースで、しかも山岳コースであることから、適当なゴルフクラブを数本持つてラウンドとしており、ゴルフバツグを担いでラウンドすることはなく、したがつて、ゴルフアが同コースでプレーをするに際し、前記モノレール装置でバツグを各ホールの順にしたがつて運搬するということも無かつたことが認められる。

(2) 右事実によれば、本件実用新案登録出願前に「朝倉パブリツク」のコース内にコースの一部に沿つてモノレール装置が設けられていたことは認められるものの、右モノレール装置は単なる資材の運搬用のためのものであつて、その敷設態様、使用態様からみて、これをゴルフバツグ運搬手段に転用しようとの着想が生まれることは到底考えられないところである。そうであれば、「朝倉パブリツク」のモノレール装置には、ゴルフバツグの運搬手段として、カートに代えて自走車輌用の支柱付軌条を用いることにより、ゴルフコース内の芝生の損傷を防止するという本件考案の技術的課題やその構成を示唆するものがあると解することはできない。

(3) 原告は、「朝倉パブリツク」におけるモノレール装置はゴルフコースに沿つて敷設されたものであり、かつ、右装置においても、カートを芝生上に直接走行移動させることによる欠点を除去している点において、本件考案が解決すべきであるとしている課題を達成している旨主張するが、前認定のとおり、「朝倉パブリツク」においては、ゴルフバツグの運搬にカートを用いておらず、モノレール装置はゴルフバツグ運搬に利用されているのではなく、その敷設形態も「ゴルフコース内に」敷設されているといえるものの、本件考案の支柱付軌条のように「ゴルフコースに沿つて」(別紙図面第1図参照)敷設されているものということはできないから、たまたまモノレール装置の敷設により運搬車が芝生上を直接走行移動することがなくなつたとしても、そのことの故に「朝倉パブリツク」のモノレールが前記のような本件考案の技術的課題や構成を示唆するものと認めることはできない。

2 原告は、本件考案は、その目的、構成及び効果のいずれにおいても、「朝倉パブリツク」の運搬技術を含む前記公知技術から、予測可能性を有していたものである旨主張する。

しかしながら、前認定説示のとおり、第四引用例ないし第六引用例及び第一八引用例を除くその余の引用例には本件考案の課題及び構成を示唆するものは認められず、第四引用例ないし第六引用例及び第一八引用例には、前認定のとおり、本件考案におけると同様にカートの車輪による芝生の損傷を防止すべきことを技術的課題としているものであることが推認されるものの、その解決手段として右各引用例が採択したのはゴルフコースに沿つてカート道を敷設することであり、これが本件考案の「ゴルフコースに沿つたゴルフバツグ運搬用の自走車輌走行のための支柱付軌条」とは構成を異にすることは既に述べたとおりである。しかして、右引用例によるも、本件考案が採択した右のようなゴルフコースに沿つた自走車輌用の支柱付軌条の構成そのものと同一又はこれを示唆するものを見出すことができない。この点は、原告が周知として主張する請求の原因2(二)(2)の<1>ないし<7>の事実を参酌しても変わるところはなく、以上の認定に反し原告が各引用例に関して主張するところは採用の限りではない。また、前認定説示のとおり、本件考案は、カートに代えて支柱付軌条をゴルフコースにおけるゴルフバツグの搬送手段として用いることにより、支柱付軌条本来の効果に加え、前記二の<3>ないし<5>のように右軌条をゴルフ場に用いたことによる特有の効果を奏するものであり、特に、<3>及び<5>は従来のカートにはみられなかつたものであるから、本件考案をもつて単なる支柱付軌条の用途を限定したものにすぎないと解することはできない。右の特有の効果性を否定する原告の主張は、要するに、それはゴルフ場に周知の支柱付軌条を用いたことによる当然の効果にすぎないとする点にあると解せられるが、既に述べたように、ゴルフ場にカートに代えて自走車輌の支柱付軌条を設置する構成を採択すること自体極めて容易とは認めがたく、そのことは右構成を採択することによりもたらされる効果について気付くことが極めて容易とはいえないことを意味するのであるから、右の構成により従来のカートにはみられなかつた効果を奏し得たものである以上、原告の右主張は理由がないものというべきである。

五 以上のとおりであるから、その主張の点に違法があることを理由に本件審決の取消しを求める原告の請求は、いずれも理由がないものというほかない。よつて、これを棄却することとする。

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